
味噌ラーメンの案内や味噌のパッケージで「北海道味噌」という言葉を見かけて、ふつうの味噌と何が違うのだろう、と気になったことはないでしょうか。北海道味噌は、北海道でつくられる代表的な米味噌のひとつです。この記事では、その原料や味わいといった特徴を整理しながら、冷涼な気候のなかで育まれてきた北海道ならではの味噌づくりの背景まで、やさしく見ていきます。
北海道味噌とは?北海道でつくられる辛口の米味噌
北海道味噌は、北海道でつくられる米味噌です。米味噌とは、大豆に米麹と塩を加えてつくる味噌のことで、日本でつくられる味噌の多くがこの米味噌にあたります。北海道味噌もこの仲間で、北海道味噌醤油工業協同組合では、北海道味噌の特徴を「辛口の米みそ」と説明しています。
味噌は、使う麹の違いによって大きく米味噌・麦味噌・豆味噌に分かれます。米を原料にした麹(米麹)を使えば米味噌、麦麹なら麦味噌、豆麹なら豆味噌です。北海道味噌はこのうち米麹を使う米味噌で、味わいの面では甘口に対して「辛口」に分類されます。
味噌を見分けるときには、原料のほかに「色」と「味わい」という見方もあります。色は白っぽいものから赤みの強いものまで、味わいは甘口から辛口まで幅があり、それぞれの軸で味噌の個性が整理されます。北海道味噌はこの見方で言うと、赤みのある色合いで、味わいは辛口に位置づけられることが多い味噌です。原料・色・味わいという三つの視点で眺めると、北海道味噌がどんな味噌なのかがつかみやすくなります。

ここで一つ気をつけておきたいのは、「辛口」という言葉です。味噌でいう辛口は、唐辛子のようなヒリッとした辛さを指すのではなく、甘口に対する分類上の呼び名です。塩味の感じ方や甘みの少なさをまとめて表した言葉、と考えるとわかりやすいかもしれません。それでは、北海道味噌の原料と味わいを、もう少し具体的に見ていきます。
北海道味噌の原料と味わい|すっきりした芳香で温和な味
北海道味噌の原料は、大豆・米麹・塩の三つです。大豆がうまみやコクのもとになり、米麹が発酵を進めて甘みや香りを生み、塩が味を調えるとともに保存性を支えます。この三つが時間をかけて熟成していくなかで、味噌ならではの色や香り、味わいができあがっていきます。
北海道味噌の味わいの特徴は、辛口でありながら、すっきりとした芳香をもつ温和な味にあります。北海道味噌醤油工業協同組合によると、北海道味噌は「麹歩合はやや高く塩分は控えめ」で、「すっきりした芳香温和な味」とされています。麹歩合とは、大豆に対してどれくらいの米麹を使うかを表す言葉です。麹の割合がやや高めで塩分は控えめという配合が、まろやかで角の立たない味わいにつながっているといえそうです。

同組合は、北海道味噌を「料理に使われる素材の味を活かし、くせのない万人向きの味」とも表現しています。主張の強すぎない味わいなので、汁物はもちろん、さまざまな料理になじみやすいのが持ち味です。「辛口」と聞くと塩気の強い濃い味を思い浮かべるかもしれませんが、北海道味噌はむしろ、すっきりとして飲み口のやわらかい味噌だと受け止めておくと、実際の味わいに近くなります。
冷涼な気候のなかで育まれた北海道の味噌づくり
北海道味噌のすっきりとした味わいには、北海道の気候が深くかかわっているとされています。北海道味噌醤油工業協同組合は、北海道が「半年が氷温に近く、盛夏でも平均気温22℃にしかならない冷涼な地」であるため、長期の熟成や切返しを要し、そのことがすっきりとした芳香の温和な味を生み出す、と説明しています。
切返しとは、熟成中の味噌をかき混ぜて全体を均一にととのえていく作業のことです。冷涼な気候のもとでは発酵や熟成がゆっくり進むため、じっくりと時間をかけ、手をかけながら仕上げていくことになります。ここで大切なのは、これはあくまで組合が説明している北海道味噌づくりの背景だという点です。「寒い地域だから濃い味になる」といった一般的なイメージとは異なり、公式には、冷涼な気候がむしろすっきりとした温和な味につながっていると語られています。
こうした造り方は、はじめから決まっていたわけではありません。同組合によれば、北海道の味噌づくりは本州から来道した杜氏(とうじ)の技術で始まりましたが、本州と同じ造り方では良い味噌にならず、苦労を重ねながら北海道独自の造り方がつくられてきたといいます。そして、北海道の気温や湿度、水といった自然条件に合わせることで、北海道らしい味噌が生まれてきました。土地の環境に合わせて工夫を重ねてきた積み重ねが、いまの北海道味噌の味わいを支えているわけです。
北海道に根づく味噌と食卓とのかかわり
北海道味噌は、地元の食卓に幅広く使われてきた味噌です。くせがなく素材の味を活かす性質から、味噌汁をはじめとする日々の料理になじみやすく、万人向きの味として親しまれてきました。北海道の味噌といえば味噌ラーメンを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、味噌はそうした特徴的な一皿だけでなく、家庭のふだんの食事の土台としても根づいています。
味噌の味わいは、同じ「北海道味噌」と呼ばれるものでも、つくり手や熟成の度合いによって少しずつ幅があります。色合いも、赤みのしっかりしたものからやや淡いものまで見られます。北海道味噌という一つの呼び名のなかにも、それぞれの造り手が積み重ねてきた個性があり、その違いを楽しめるのも味噌の面白さといえます。ラベルや売り場で北海道味噌を見かけたときは、色や香りに少し目を向けてみると、いつもの味噌がまた違って感じられるかもしれません。
北海道味噌をもっと味わうために
ここまで見てきたように、北海道味噌は北海道でつくられる辛口の米味噌で、麹歩合はやや高く塩分は控えめ、すっきりとした芳香をもつ温和な味わいを持ち味としています。原料は大豆・米麹・塩というシンプルな組み合わせですが、そこから生まれる味わいには、冷涼な気候に合わせて長期の熟成や切返しを重ねてきた、北海道ならではの味噌づくりの工夫が積み重なっています。
味噌を「原料」「色」「味わい」という見方で眺めてみると、北海道味噌がどんな位置にある味噌なのかが少し立体的に見えてきます。そして同じ視点をほかの地域の味噌に向ければ、それぞれの土地ならではの個性が浮かび上がってきます。淡色で辛口とされる信州味噌、甘めの白味噌で知られる京都の味噌など、味噌の世界は地域ごとに違った表情を持っています。次に味噌を手に取るとき、その土地の気候や食文化に少しだけ思いをはせてみると、いつもの一杯がまた違って感じられるのではないでしょうか。

